個人事業をしていると、親や配偶者に事業を手伝ってもらい「青色専従者」にしているケースがあります。
このときよくある疑問が次のようなものです。
結論から言うと、
青色事業専従者または白色申告の事業専従者に該当する親族は、その年の扶養控除の対象になりません。
なお、親を扶養に入れた場合に実際どのくらい税金が安くなるのかは年収によって変わります。年収別の減税額については ▶親を扶養に入れると税金はいくら安くなる? で詳しく解説しています。
扶養控除を受けるためには、
などの条件を満たす必要があります。
この記事では、
をわかりやすく解説します。
親が青色専従者・事業専従者の場合は扶養控除の対象にならない
青色事業専従者または白色申告の事業専従者に該当する親族は、その年の扶養控除の対象にはなりません。
これは親だけでなく、
- 配偶者
- 子
- 兄弟姉妹
など、生計を一にするすべての親族に共通するルールです。
扶養控除の条件
扶養控除の対象となる「控除対象扶養親族」には、主に次の条件があります。
- 生計を一にする親族であること
- 合計所得金額が58万円以下であること
- その年の12月31日時点で16歳以上であること
- 青色事業専従者または事業専従者でないこと
なお、親が年金生活の場合は「年金収入がいくらまでなら扶養に入れるのか」という点も重要になります。年金収入と扶養判定の関係は ▶親の年金はいくらまでなら扶養に入れる? で詳しく解説しています。
ここで重要なのは、専従者に該当すると扶養控除の対象外になるという点です。
「青色事業専従者でないこと」が要件
国税庁は、青色申告者の事業専従者について次のように案内しています。
青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれません。
つまり、
- 親を青色専従者として届け出ている
- 専従者給与を支払っている
この場合、その親族は扶養控除の対象になりません。
なぜ専従者だと扶養にできないのか
このルールは、税制の仕組みを理解すると理由がわかります。
青色事業専従者とは
青色事業専従者とは、個人事業主の事業を主に手伝う親族のことです。
主な条件は次の通りです。
- 事業主と生計を一にする親族
- 12月31日時点で15歳以上
- その年のうち一定期間以上事業に従事
ここで注意したいのは、専従者は15歳以上という点です。
一方で、扶養控除は16歳以上なので、年齢要件が異なります。
専従者給与は事業の経費になる
青色申告の場合、専従者に支払った給与は事業の必要経費になります。
例えば、親に専従者給与として96万円支払った場合、事業所得は96万円減ることになります。
これは、家族に所得を分散する仕組みでもあります。
扶養控除との二重優遇を防ぐ仕組み
もし専従者給与と扶養控除の両方が使えると、
- 専従者給与 → 経費になる
- 扶養控除 → 所得控除になる
という二重の税優遇になってしまいます。
このため税法では、事業専従者は扶養親族になれないとされています。
なお、このルールは
- 青色申告の専従者
- 白色申告の事業専従者
のどちらにも適用されます。
よくある勘違い
ここからは実務でよくある誤解を整理します。
専従者給与が0円なら扶養にできる?
結論から言うと、できません。
ポイントは給与を払っているかどうかではなく、専従者に該当するかどうかです。
例えば
- 事業を常時手伝っている
- 専従者として届出している
この場合、給与が0円でも扶養控除は使えません。
親が年金生活なら扶養にできる?
親が年金生活で所得が少ない場合でも、専従者に該当するなら扶養控除は使えません。
例えば
- 親は年金のみ
- 店を手伝っている
- 専従者として登録している
この場合でも、専従者であること自体が扶養控除の対象外条件になります。
同居していれば扶養できる?
同居しているだけでは扶養控除は受けられません。
扶養控除で重要なのは、生計を一にしていることです。
例えば、
- 同居していなくても仕送りしている
- 生活費を負担している
場合は、生計を一にしていると判断されることがあります。
別居している親を扶養に入れる場合の仕送り条件や判断基準については ▶別居の親を扶養に入れることはできる? で詳しく解説しています。
ただし、
- 所得要件(58万円以下)
- 専従者でないこと
などの条件も満たす必要があります。
専従者を途中で辞めたら扶養に入れられる?
ここは検索でもよく疑問にされるポイントです。
結論としては、その年に扶養控除を受けられるかどうかは、専従者としての従事状況によって判断されます。
青色事業専従者の要件は、その年を通じて6か月を超えて事業に従事または事業に従事できる期間の2分の1を超える期間従事などとされています。
そのため、
- 年の途中で専従者を辞めた
- 実際の従事期間が短い
場合には、その年に専従者に該当するかどうかを個別に判断する必要があります。
なお、親を扶養に入れられないケースは専従者以外にもいくつかあります。よくあるNG例については ▶親を扶養に入れられないのはどんなとき? でまとめています。
年末時点だけで判断されるわけではない
扶養控除は基本的にその年の所得で判定されますが、専従者制度は年間の従事状況によって判断されます。
そのため、年末には専従者でないという理由だけで必ず扶養控除が使えるとは限りません。
翌年から扶養にできるケース
翌年に
- 事業を手伝っていない
- 専従者に該当しない
場合には、
翌年から扶養控除の対象になる可能性があります。
専従者と扶養控除どちらが節税になる?
実務ではここが最も重要な判断ポイントです。
専従者制度と扶養控除は併用できないため、どちらを選ぶか検討する必要があります。
扶養控除の節税額
扶養控除の金額は次の通りです。
| 区分 | 控除額 |
|---|---|
| 一般扶養親族 | 38万円 |
| 老人扶養親族 | 48万円 |
| 同居老親等 | 58万円 |
例えば所得税率10%なら、約4万〜6万円程度の節税になります。
専従者給与の節税効果
一方、専従者給与は全額が事業の経費になります。
例えば専従者給与96万円の場合事業所得は96万円減少します。
税率10%なら約9.6万円の節税になります。
簡単な節税シミュレーション
簡単な例で比較してみます。
ケース① 扶養控除
同居老親を扶養にした場合
- 控除額58万円
- 税率10%なら
約5.8万円の節税
ケース② 専従者給与
- 専従者給与96万円
- 税率10%
約9.6万円の節税
どちらが得か
多くの場合、専従者給与の方が節税効果は大きくなる傾向があります。
ただし、
- 専従者本人の所得税
- 住民税
- 社会保険
なども関係するため、ケースごとに検討が必要です。
2025年税制改正:特定親族特別控除にも注意
2025年の税制改正では、
特定親族特別控除
が新設されました。
これは主に大学生世代などの親族を対象に、所得に応じて控除を受けられる制度です。
ただし、青色事業専従者に該当する場合は、この控除の対象にもなりません。
そのため、子どもや若い親族を専従者にする場合は、扶養控除だけでなくこの制度との関係も確認しておく必要があります。
まとめ:専従者にするか扶養にするかは最初に決める必要がある
親を扶養に入れる場合の具体的な手続き(年末調整・確定申告の書き方)については、次の記事で詳しく解説しています。
この記事のポイントをまとめます。
そのため、専従者にするか扶養にするかは最初に検討して決めることが重要です。
事業を手伝ってもらう親族がいる場合は、
- 扶養控除
- 専従者給与
どちらが有利になるかを比較して判断するとよいでしょう。





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