3歳になったばかりの息子は最近なにを言っても、まず最初に出てくる言葉が「イヤ!」。
「ごはん食べよう」
「お風呂入ろう」
「保育園に行くよ」
どれに対しても、反射的に「イヤ!」。
かといって本当に嫌がっているわけではないようで、少し時間が経ったり、こちらが流れを作って進めていくと、むしろ機嫌よく食事をしたり、お風呂に入ったり、保育園に行ったりする。
最初に否定はするけれど、結果的には普通にやる。
なかなかの“天邪鬼”っぷり。
とはいえ、親には親の都合もある。毎回「イヤ!」に付き合って、十分に時間をかけられるわけでもない。
そこで、この3歳前後に見られる「まず否定」「天邪鬼」な反応は、
- よくある発達の過程なのか
- それとも注意が必要なサインなのか
- 親はどう関わるのが、子どもにとって一番良いのか
発達段階の視点から、とりあえず「イヤ」という”天邪鬼”の正体と、親としての適切な関わり方を整理してみたい。
1.”いやいや期”の発達上の意義
Q1.2歳後半~3歳前後に、なぜ「イヤ」が増える?
A. 「自分でやってみたい」「自分で決めたい」という方向にぐんと成長している証拠
この時期の子どもに多い「嫌!」「違う!」「知らない!」という反応は、どうやら性格がひねくれているとか、反抗期が早いとか、そういう話ではないらしい。
少し調べてみると、発達心理学では1〜3歳くらいは「自分でやりたい」「自分で決めたい」気持ちが一気に強くなる時期だとされている。
エリク・エリクソンという心理学者の理論で、この年頃は「自律性 vs 恥・疑惑」という段階にあたるらしい。出典:発達心理学者エリク・エリクソンの理論より(『Childhood and Society』)
ちょっとよくわからん難しい言葉やけど、ざっくり言えば、
- 自分でやってみたい
- 大人に決められるのはイヤ
- とにかく主導権を握りたい
そんな欲求が前に出やすい時期、ということらしい。
だから、大人から見ると「いや、別にそこまで嫌そうじゃないよね?」という場面でも、とりあえず「イヤ!」が出てくる。
反抗しているというより、「まず自分の意思を出す」こと自体が目的になっている感じ。
何に対してもまず否定から入るあの反応も、自我が育ってきているサインなのかもしれないなと思えれば、気持ちの上でこちらも少し楽に感じる。
Q2.それなら自分の要求を伝えてくれればいいのに?
A. 自分の気持ちを言葉にする力が未成熟だから。
正直、親としてはこう思う。
「嫌じゃないなら、“今は遊びたい”って言えばいいやん」
「なんで全部“イヤ!”なん?」
でもこれも、調べてみるとわりと理由がはっきりしていた。
どうやら3歳前後の子どもは、
- 自分の気持ちを言葉にする力
- 状況を整理して説明する力
- 事実と感情を切り分ける力
このあたりが、まだ発展途上らしい。当然か。
つまり、彼の頭の中では
「今は遊びたい」
「切り替えるのがしんどい」
「急に言われて戸惑っている」
みたいな感情がごちゃっと湧いているんだけど、それを言葉にして伝えるところまではいかない。
結果として、いちばん簡単で、いちばん早く出せる言葉が「イヤ!」になる。
本音は「今は遊びたい」「まだ気持ちが切り替わってない」、でも口から出るのは「イヤ!」。
つまり「とりあえず否定」は反抗というより、最短距離の自己表現なんだと思えてくる。
考えてみれば、大人だって疲れてるときに理由を説明する前に「無理」「今じゃない」って言うことがある。
3歳児なら、なおさらやな。
2.”問題行動”と心配するその前に。
Q3.拒否するを通り越して”嘘をつく”んだけど大丈夫?
A. 問題ない。”嘘”じゃなくて、記憶の扱い方が未成熟なだけ。
実はこの問答を繰り返すうちに息子からのレスポンスは「イヤ!」だけじゃなくなってきた。
「ごはん食べよう」と言うと「お腹すいてない」、「お風呂入ろう」と言うと「もう入った」。
もちろんそんな事実はなくて、どう考えてもその場を回避するための言い訳でしかない。
正直、ここで一気に不安になる。
「え、もう嘘つくようになった?」
「このまま放置して大丈夫なん?」
でもこれも、どうやら“悪い方向に進んでいる”という話ではなさそうだった。
まず前提として、3歳前後の子どもは、
- 事実を正確に思い出して説明する
- 相手の視点を想定して話を組み立てる
- 「嘘」と「本当」を意図的に使い分ける
こういうことは、まだほとんどできない。
だから、大人が言うところの「相手をだますための嘘」とは、そもそも性質が違う。
この時期に出てくる
「お腹すいてない」
「もうやった」
という言葉は、事実を操作しているというより、“今やりたくない”という気持ちを、別の形で外に出しているだけ。
「イヤ!」
↓
「お腹すいてない」
つまり拒否の表現が、少しだけ回り道になっただけだ。
むしろここで見ておくべきなのは、感情をそのままぶつける段階から、“理由っぽいもの”を作ろうとしているという点。
これは、
- 否定一択 → 言い訳が出る
- 叫ぶ → 説明しようとする
という意味で表現が一段進んだ状態ともいえる。
もちろん、事実としては間違っているし、そのまま肯定する必要はなけど、
「嘘をついた!」
「ダメでしょ!」
と強く反応してしまうと、子どもは
- 何を言えば正解なのか
- 本当の気持ちを出していいのか
これが分からなくなりやすい。
ここで大事なのは、事実を正すことより、“回避したい気持ちがある”という点を拾うこと。
「お腹すいてないんやな」
「今はやりたくなかったんやな」
という風に受け止めて、子供の意思決定を尊重したうえで、親側は声の掛け方を考えた方がいいみたい。
3.どう対処していく?
Q4.親はどう声掛けするべき?
A. 説得より先に「感情の代弁」を行う。
ここまでで、
- 天邪鬼
- 「イヤ!」
- 嘘っぽい言い訳
発達の途中だというのは、頭では分かった。分かったけど、じゃあ実際にどう声をかければいいのか。正直ここが一番知りたい。つい出てしまうのは、
「さっきまで遊んでたやん」
「嘘つかんと食べなさい」
「嫌でもやらなあかんやろ」
みたいな、説得・正論・説明のフルコース。
でも、いろいろ見ていくと、どうやらこの段階ではそれ、あまり意味がないらしい。
ポイントはひとつだけ。
説得する前に、気持ちを代弁する。
たとえば、基本形はこれ。
「そっか、今は○○したかったんやな」
「まだ遊びたかったんやな」
「急に言われて嫌やったんやな」
子供が主張するYesかNoかをひっくり返そうとしない。
正しいかどうかを判断しない。
理由を聞き出そうともしない。
ただ、子どもが言葉にできなかった気持ちを、親が代わりに言葉にして返す。
これだけ。
子供は自分の気持ちや考えをうまく言語化できないから、とりあえず「イヤ!」とか、取り繕いの「嘘っぽい返事」をしているだけなんだから、そこに正論を重ねても話がこじれるし、子供は混乱するだけ。
でも感情をそのまま受け止めて、言葉にして返してもらうと、子どもは一度そこで落ち着く。
それから先で、「でも今日は保育園の日やで」とか、「今はごはんの時間やで」とか、現実の話をすればいい。
この順番が大事らしい。
調べていて印象的だったのは、こうした関わりはわがままを助長するためじゃなく、感情を整理する力を育てるためのものだという点。
つまり、
- 感情は自由
- 行動には枠がある
この感覚を、少しずつ身につけさせる関わり方、ということらしい。
Q5.都合もあるし、「やらなければいけないこと」もあるよね?
A. 気持ちは尊重し、行動は大人が決める。
気持ちを受け止めるのが大事なのは分かったけど、でも毎回それに付き合えるほど暇ちゃう。
正直、これに尽きる。
保育園の時間もあるし、仕事の都合もあるし、こっちが限界な日もある。
子どもの気持ちが大事なのは前提として、それでも“やらなければいけないこと”はある。
じゃあ、その場合はどうするのか。
子供の気持ちは尊重する。
でも行動は大人が決める。
まずやるのは、やっぱり気持ちの受容。
「嫌やったんやな」
「行きたくなかったんやな」
ここで説得や是正はしないし、そもそも正しいかどうかも判断しない。
次に、事実だけを伝える。
「でも今日は保育園の日」
「今はごはんの時間」
理由を長々と説明しない。質問もしない。最後に、行動は断定する。
「行くのは決まり」
「ごはんは今食べるよ」
ここで「どうする?」とか「行ける?」って、子供の意思確認をしてしまうと、また振り出しに戻る。
選択権を与える場面と、決まっていることを伝える場面は、分けた方がいいらしい。
ポイントは子どもを納得させることじゃない。
「気持ちは分かってもらえた」
「でもルールは変わらない」
この2つを、同時に経験させること。
わがままを通すためでも、押さえつけるためでもなく、感情の自由と、行動の枠組みを別のものとして伝える関わり方、というわけ。
Q6.報酬や誉め言葉で行動を促すのはあり?
A.使いどころが大事。常用すると癖になる。
- 「これ終わったらおやつな」
- 「すごい!天才!えらい!」
特におかし、おもちゃ、YouTubeなどのお気に入り動画なんかが結構報酬として効いて、動きだしたりする。
でもこれって、報酬がなかったらやらない子にならないか不安になる。
これを常用すると、起きやすいのがこの3つ。
- 行動の動機が外部依存になる →「やる理由」が”おやつ”や”褒められる”ことになる。
- 交渉・吊り上げが始まる → 「もっとちょうだい」や「今日は違うやつがいい」
- 嫌な気持ちを処理する経験が減る → ”嫌でもやる”、”折り合いをつける”練習ができない。
じゃぁ”報酬で釣る”ようなことはしないほうがいいのか?
結論から言うと、完全NGではない。
使っていい場面は、わりと明確で
- 習慣づけの初期段階
- 医療・安全が絡む場面
- 親の余裕が完全にゼロな非常時
「今日だけ」「今だけ」と割り切るなら、現実的な選択としてアリ。
物を与える報酬だけじゃなくて、過剰な誉め言葉も同じ。「天才」「かしこい」「えらい」も、即効性はある。
でもこれも常用すると、
- 「能力は固定されたもの」という受け取り方
- 親の評価が行動基準になる
この傾向が強くなりやすい。
じゃぁどう褒めてあげればいいのか?
褒め方のポイントはシンプルで、結果や能力じゃなく、プロセスを言葉にする。たとえば、
- 「嫌やったのに、やったな」
- 「ちゃんと考えて切り替えたな」
- 「時間かかったけど、最後までやったな」
これなら、
- 行動の理由が自分の中に残る
- 次も再現しやすい
- 親の評価に縛られにくい
物を与えるご褒美も、強い褒め言葉も、使いすぎると「それがないと動けない」状態になりやすい。
だから大事なのは、使う場面と、使い方。
ご褒美のために動かすんじゃなく、「自分で動けるようになるまでの補助輪」くらいにとどめておくのが、ちょうどいい使い方なんだと思う。
Q7.保育園の先生からの報告と食い違うときは?
保育園に通うようになると、降園時に先生から
「今日はちゃんと片付けできましたよ」
なんていう、その日の報告を頂いたりすることがある。
でも家で子供本人に聞くと、「やってない」とか「先生が怒った」って、報告とは食い違った回答が返ってくる。
……どっちやねん。
正直、ここで親が一番やりたくなるのは「事実をはっきりさせること」だと思う。
「ほんまにやったん?」
「先生はやったって言ってたで?」
「どっちが正しいん?」
でも調べていくと、この場面で事実確定を目指すのは逆効果になりやすいらしい。
整理すると、そもそも両者の話は性質が違う。
- 先生の話 → 行動や状況を見た、事実寄りの一次情報
- 子どもの話 → そのときどう感じたか、感情寄りの二次情報
つまり、ズレていて当たり前。子供は間違ってるというより、「印象に残った感情」を話しているだけ、というケースが多い。
ここでの親の役割は、正誤判定をすることじゃない。「どっちが正しいか」を決めにいくと、子どもは一気に“証人席”に座らされる。
すると、
- 話すほど不利になる
- 記憶を合わせようとして話が歪む
- 本音を言わなくなる
この流れに入りやすい。
じゃあ、親は何を判断するのか。見るべきなのは、たった一つ。
行動修正が必要かどうか。
例えば、危ないことをしたとか、誰かを傷つけた、ルールとして見過ごせない。こういう場合だけ、「次どうするか」を一緒に考える。それ以外は、
「そう思ったんやな」
「嫌な気持ちになったんやな」
で止めていい。
事実の詰め合わせより、感情が落ち着くことの方が優先。
4.まとめ┃3歳の「イヤ!」との付き合い方
3歳前後に見られる、いわゆる“いやいや期”は、食事や入浴、保育園など、これまで親に決められていた生活から
「自分で選びたい」
「自分で決めたい」
という気持ちが芽生えてくる過程だとわかった。
親の要求に対して本当は、
「今はごはんより遊びたい」
「お風呂はテレビを見たあとがいい」
「今日は保育園じゃなくて公園に行きたい」
そんな思いが頭の中にある。
ただ、この時期はまだ、それをうまく言葉にして伝える力が追いついていない。だから全部ひっくるめて、いちばん簡単な言葉
「イヤ!」
で代弁しているだけ。
そう考えると、反射的にイラっとする前に、「じゃあ、どうしたいんやろ?」と一歩引いて受け止める余裕が出てくる。
とはいえ、現実には仕事や時間の都合で、どうしても動いてもらわないといけない場面もある。
そんなときは、
「ごはん食べたら一緒に遊ぼうか?」
「早くお風呂に入ったら、続きが見られるで」
「保育園のおやつ、○○らしいよ」
みたいに、ちょっとした“楽しみ”を添えて背中を押すのもアリ。
それで切り替えができたなら、
「よく切り替えられたな」
「嫌やったのに、ちゃんと動けたな」
と、行動そのものを言葉にして褒めてあげる。
逆に、時間に余裕がある日なら、無理に動かさず、子供の意思を尊重してそのままにしておく選択もあっていいと思う。言葉が育ってくれば、
「どう思ってるのか」
「何がしたいのか」
を少しずつ具体的に伝えられるようになるし、こちらの事情も理解できるようになってくる。
だからこの時期に大切なのは、力で押さえつけないこと。
そして、「気持ちは聞いてもらえた」と感じさせてあげること。
ときには報酬や褒め言葉も使いながら、完璧を目指さず、うまく付き合っていけばいい。
3歳の「イヤ!」は、困った反抗じゃなく、ちゃんと育っている証拠なんやと思うことが大切。




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