住民税非課税世帯を対象にした給付金が出されるたびに、批判が集まるのは多額の資産を持つ、年金生活高齢者。
「貯金が何千万円もある高齢者が、なぜ給付金をもらえるのか?」
という疑問はもっともに聞こえる。
しかし結論から言うと、多くの給付制度は“資産”ではなく“所得”を基準に設計されているため、資産があっても給付対象になること自体は制度の想定内だ。
この違いを理解しないまま議論すると、「ズルい」「不公平だ」という感情だけが先行し、制度の是非を正しく評価できなくなる。本記事では、よくある不満の正体を分解しつつ、なぜこうした設計になっているのかを整理していく。
よくある不満|「貯金ある人がもらえるのおかしくない?」
給付金や支援策が発表されるたび、必ずと言っていいほど出てくる声がある。
- 「預貯金が何千万もある高齢者が対象になるのはおかしい」
- 「本当に困っている若い世代が外れて、金持ちが得している」
- 「資産があるなら自己責任で使えばいい」
感情としては理解できる。
実際、生活が苦しい現役世代ほど給付から漏れやすい構造があるのも事実や。
ただし、ここで混同されがちなのが次の2つ。
- 所得(フロー)
- 資産(ストック)
この区別をつけんまま議論すると、制度設計そのものが見えなくなる。
所得と資産はまったく別物
まずは言葉の整理からいこう。
所得とは何か
所得とは、一定期間(通常は1年)に新しく得た収入のこと。
- 給与
- 年金
- 事業収入
- 利子・配当(一定条件下)
税制や給付制度の多くは、この「1年間の所得」を基準に設計されている。
資産とは何か
一方、資産とはこれまでに蓄積されたお金や財産の残高を指す。
- 預貯金
- 有価証券
- 不動産
所得が少なくても、過去に稼いだ結果として資産を多く持っている人は珍しくない。特にリタイヤして退職金などを得た高齢者層では、この傾向が強い。
なぜ「所得基準」なのか
では、なぜ国は資産ではなく所得を基準にするのか。
理由はいくつかあるが、代表的なものを挙げる。
① 把握しやすい
所得は、
- 源泉徴収票
- 年金支払通知
- 確定申告
といった形で行政が比較的正確に把握できる。
一方、資産は
- タンス預金
- 名義分散
- 評価額の変動(不動産・株)
などがあり、正確な把握が難しい。。
② 制度コストの問題
資産調査を厳密にやろうとすると、
- 行政コストが跳ね上がる
- 手続きが煩雑になる
- 支給が遅れる
結果として、本来支援したい層への給付が滞る可能性が高くなる。
所得基準と資産基準の違い
| 観点 | 所得基準 | 資産基準 |
|---|---|---|
| 把握のしやすさ | ◎(データあり) | △(把握困難) |
| 行政コスト | 低い | 高い |
| 国民への介入度 | 低い | 高い |
| 不正防止 | 一定水準 | 抜け道が多い |
| 感情的な納得感 | △ | ◎ |
※「納得感」は高いが、制度としては必ずしも優れているとは限らない。
高齢者が給付対象になりやすい理由
ここで「なぜ高齢者が目立つのか」を整理しておく。
年金は所得が低く見えやすい
多くの高齢者は、主な収入が年金のみだ。
さらに日本の税制では、
- 公的年金等控除
- 基礎控除
があるため、年金収入があっても課税所得はゼロに近くなるケースが多い。
結果として起きること
- 所得:低い
- 資産:多い
この状態でも、制度上は「低所得者」として扱われる。
現役世代が思う「ズルい」の正体はどこにあるのか
ここまで整理すると、不満の焦点が見えてくる。
多くの場合、問題視されているのは給付そのものではなく負担とのバランスや。
- 現役世代は税・社会保険料を払い続けている
- その一方で、給付は所得の低い層(=高齢者)に集中する
この構造が、「感情的な不公平感」を生んでいる。
資産基準にすれば解決するのか
直感的には「資産がある人を外せばいい」と思える。
だが、実際には次のような問題が出る。
- 資産評価の線引きが難しい
- 不動産をどう評価するか
- 株価変動で対象が毎年変わる
- 事前に資産を減らす行動が誘発される
結果として、制度が複雑化し、抜け道も増える。
次に読むべき視点
ここまでで分かるのは、
- 「資産があるのに給付される」のは制度バグではない
- 所得課税主義の必然的な帰結
という点や。
ここでは次の疑問が残る。
- なぜ年金世帯の所得はここまで低く見えるのか
- 年金控除はどこまで優遇されているのか
- 現役世代との負担差はどう整理すべきか
納得できないのは自然、でも理由はある
- 資産と所得は制度上まったく別物
- 給付金は主に所得基準で設計されている
- 高齢者が対象になりやすいのは年金控除の影響が大きい
- 感情的な違和感は、負担と給付の非対称性から生まれている
現役世代からすれば、完全にスッキリする話ではない。
ただ、「なぜそうなっているのか」を理解すると、 少なくとも議論の出発点は整理できるはず。




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